横穴墓を探す
 横穴墓は崖などの斜面に造られているため、墓前域(墓前の細長い広場・通路)は埋まり易く、多くの場合斜面地下に埋もれて、どこにあるのか分からない状況です。
 横穴墓を積極的に探す方法としては「地中レーダー探査」が最も有効です。車輪の付いた送受信装置を斜面上に移動させ、地中に放った電磁波の反射速度を計測することで、横穴墓の空洞の位置や深さが解析装置の画面に示されます。
 防空壕などの空洞に対しても同じ反応を示すので、空洞の位置や規模を検討して、横穴墓を突き止めます。

地中レーダー探査のようす 空洞反応の画像

調査の主な工程
墓前域内の堆積土層:土層堆積状況から埋没過程を推定して、埋葬儀式や追葬等について調べます。副葬品が発見される場合があり、造営時期を示す資料となります。

羨門閉塞石の積み方:閉塞石の積み順序などから技術や作業上のくせ等を読み取り、墓前域の堆積状況と合わせて追葬等の詳細について調べます。

人骨の実測〜取上げ:埋葬姿勢や位置等の遺体安置の状況を詳細に記録した上で、貴重な資料である埋葬人骨を取り上げます。

玄室敷石・床の造形:築造過程のうち、床面の平坦化など最終的な調整作業の実態を明らかにして、遺体安置に至るまでの工程を調べます。

壁・天井面の工具痕:掘削工具の復元や掘削手順の解明によって、視覚効果やデザインを含めた築造に関する意図や技術体系について調べます。

墓前域の土層断面
羽根沢台横穴墓群9号墓
玄室天井中央部の工具痕
羽根沢台横穴墓群12号墓

調査成果を図化する
 現場で行った横穴墓や埋葬人骨についての実測や撮影の成果は、調査報告書にまとめて発刊します。
 特に横穴墓の形態については、他の横穴墓との比較や形態変遷の研究に重要な資料となるので、分かりやすい表現方法が重要となります。その一つとして立体図法があります。下図は実測図として利用できるアイソメトリック(等角投影)図です。遠近感のある透視図と異なり、奥がせり上がって見えますが、スケールをあてて実長を測ることが可能です。

野水橋横穴墓群3号墓
(アーチ形の天井)
羽根沢台横穴墓群7号墓
(ドーム形の天井)