福島三貫地貝塚出土人骨の腰骨に、石鏃が刺さってる例があります。故意が事故かはわかりませんけどね。
 愛媛県上黒岩岩陰出土の成人女性の腰骨には骨製尖頭器が刺さっていました。最近改めて調査したところでは、生きているうちに2回刺している。しかし刺さっていた骨角器は実は尖頭器ではなく、ヘアピン状の装身具であることがわかりました。生きているうちに、寝そべっているところを斜め後ろから2回刺し、これが致命傷となっています。これは何か儀礼的な感じがしますね。悪魔祓いとか…。犯罪ではなくて、彼らの精神生活の行為の中のひとつかもしれません。基本的に縄文は戦争をしませんが、争いごとくらいはあったのかもしれませんね。(小林)

 

 縄文時代恐ろしいですねー。ガイシャは女性ですか。凶器はヘアピンとか。人間関係のもつれとか、女の恨みか、あるいは財産目あてが原因でしょうか…。その点旧石器は断捨離ですから。財産がない。みんな平等の世界。略奪しようにも、取るものがありません。旧石器時代のような遊動型の狩猟採集民は、数家族くらいの小グループで生活していますが、グループ間のメンバーの移動が比較的容易であることが知られています。ひんぱんに人が変わることができるんです。あいついやだなと思ったら、グループを移動すれば解消される。カウンセラーなんて必要ない。ストレスのない遊動型狩猟採集民のいいところですね。その点定住や農耕がはじまるとストレスが増え、争いごとが多くなるようです。(長ア)

 

 セレブはいますね。多少身分の差が出て来たのが縄文時代。階層社会がはっきりするのは弥生時代。農耕が始まってから。水田をみんなで作って管理しなきゃいけないってなると、特権的なリーダーが必要なようです。
  縄文後晩期には、貝輪が13個右腕にはまった女性の人骨が見つかっています。小さいころに装着して外せなくなっています。多分利き手なんでしょうがこれでは働けない。一般的な労働を免除された特別な女性です。セレブというかどうかは別として、持つひとと持たない人がでてきています。この女性の場合はシャーマンなのかもしれません。選ばれたひとなのか血統なのかわからないけど、身分、役割というか、社会的な違いが生じてくる。男性ではヒスイ。遠く離れた産地から運ばれるものですから。前期から発達してきた装身具の中でも特別なものです。ヒスイは男性の墓から出土しています。普通の耳飾りはみんな着けていたものかもしれませんが、調布市下布田遺跡から出土したような大型のものは特別品でしょう。部族の長か、その奥様なのかもしれません。(小林)

写真:大珠(たいしゅ)三鷹市 井の頭池遺跡群B出土

 

 日本では埋葬されたお墓は殆ど確認できていません。シベリアの2万7千年前のスンギールでは、少年と少女の合葬例が見つかっています。頭に大量のビーズが巻かれ、マンモスの牙を加工した槍など副葬されて、赤い顔料で彩色されています。しかし特殊な人物ではなくて、上手く残った例と考えられます。顕著な階層を示すような遺物は旧石器にはあまりみつかっていない。誰が狩猟しても、食糧は平等に分配するのが狩猟採集民の掟ですから。みんなで生き残るための厳しい掟があったはずです。だからセレブもいないけど貧困もない。みんなが同じフラットな社会。貯蔵食糧がないので誰かがため込むということもなく、獲ったものは皆で平等に分けて食べてしまう。あまり多くは持たないけれども平等な社会ですね。(長ア)